きみからのおくりもの 12


●きみからのおくりもの●


 休日の午後を、アンジールとザックスは部屋でのんびりと過ごしていた。
 「んー……っ」
 ラグマットの上で寝転がりながら雑誌を捲っていたザックスは、仰向けにひっくり返って伸びをした。そのままごろりと寝返ると、視界の隅に何かが映った。少し視線をずらすと、それはリビングの白い壁際に置かれた少し大きめの観葉植物の陰に隠れる。
 「何……?」
 ザックスは寝ころんだままズルズルと匍匐前進をした。そして、観葉植物の鉢を少しだけずらす。すると、葉の陰に隠れていた壁に奇妙なものが描かれていた。
 恐らくクレヨンだろう。赤色のそれで、少しいびつな大小ふたつの円が描かれている。でも、良く見るとそれは、ハートの形にも見えた。
 「これって、」
 「どうした?」
 ザックスが体を起こして壁をまじまじと見つめていたら、背後からアンジールが覗き込んできた。そして、クスリと小さく笑った。
 「おや、全然気付かなかったな」
 「もしかして……、小さな俺?」
 アンジールの方を向くと、彼の掌が頭にポンと乗せられた。そのまま緩く撫でられる。
 「あぁ、そうだろうな。クレヨンを与えたんだ……まさかこんな所に描いていたとはな……」
 指先でそっと触れながら、「きっとこれは、ハートなんだろうなぁ」とアンジールが呟く。彼の蒼い双璧が優しげに細められた。
 ふたりで壁に描かれた、ふたつのハートを見つめた。大きいハートと小さいハート。

 『これねー、ザッくんとあんじーゆねー』

 きっとコッソリ描いたのだろう。嬉しそうに楽しそうに。
 「な、可愛いだろ? 小さなお前、凄く可愛かったぞ」
 アンジールがそっとザックスの肩を抱き寄せる。
 「あいつ、アンジールの事、大好きって言ってた」
 「そうか」
 アンジールは壁に目線を移しつつ、何処か遠くを見つめるような瞳で穏やかに笑う。小さな体で跳ね回り、笑ったり泣いたりしていた姿が浮かび上がる。ザックスも笑った。でも、胸がほんの少しだけ切なくなった。
 「俺も大好きだよ、あんたの事……」
 「知ってるさ」
 こめかみに頬を寄せられた。優しい温もりに胸の奥がきゅんとする。
 「大きくても小さくても、お前が大好きだ、ザックス」
 アンジールはザックスをぎゅっと抱き締めた。




 ずっとずーっと、だいしゅきだもんね




 20100728