ザックスが小さくなってしまったので、アンジールは初めて子供服と言うものを買った。それは通販サイトだったけれども。そして一度注文して以来、実は時々サイトをチェックするようになってしまった。サイトは既にブックマーク済みだった。
とにかく、可愛いのだ。
ザックスが。
もうすっかり「親バカ」そのもので、「これはザックスに似合うかもしれない」と思いながら、商品画面に見入ったりしている。現に数着買い足してしまった。
そんなある日。
アンジールの部屋に小さな紙袋が届いた。
「それ、なにー?」
紙袋を抱えてリビングに入ってきたアンジールの足元に纏わりつきながら、ザックスはぐいと彼を見上げた。アンジールはニッコリと微笑む。
アンジールはこうして自分を見上げる時のザックスが大好きだった。本来のザックスとも、お互いの僅かながらの身長差を感じさせるような時、それは並んで歩いている時など、ザックスがそっと小さく自分を見上げるあの瞳が堪らないのだ。
保護欲を掻き立てられてしまうと言ったら言い過ぎかも知れないが、ザックスに下から見上げられるのに弱かった。
さて。
「何だろうな? 開けて良いぞ」
アンジールの言葉に、ザックスは喜び勇んで紙袋を開ける。バリバリと音を立てながら開けると、紙袋の中には小さな服が入っていた。ザックスは目を輝かせる。くるっとアンジールの方を向いて、「ザッくんの? これ、ザッくんの?」と頻りに聞いてくる。頷くと「ありがとー!!」と叫びながら、ど−んと抱き付いてきた。アンジールは柔らかくて温かくて小さい体をきゅっと抱き締めて、マシュマロのような頬にキスをした。ちゅっ。
「着てみるか?」
「うん!!」
包装袋から出したそれは、黄色のパーカーだった。袖と裾に白のテープでラインが入っている。しかし、ただのパーカーだったら、アンジールは買わなかった。実はこのパーカーは……。
「あーっ!! うしゃたん!! うしゃたんのおみみー」
アンジールがザックスにパーカーを羽織らせて、頭にフードを被せると少し長めの耳が垂れ下がった。そう、フード部分にうさぎ耳が付いているのだ。
うさぎ耳付きパーカー。
これを通販サイトで見つけた瞬間、アンジールは迷わず購入ボタンをぽちっと押していた。
「どうだ?」
「わあぁ!! ザッくん、うしゃたんみたい?」
小さく首を傾げて、ザックスはニコニコ笑いながらアンジールの前でポーズをとった。
猛烈に可愛い。アンジールは、自分の見立ては正しかったと心の中でガッツポーズをとった。
「可愛いうさちゃんだな。気に入ったか?」
「うんっ!!」
ザックスはその場でピョンピョン跳ねながら、「うしゃたーん!!」と騒いでいる。アンジールはソファに座って、その姿を見守っていた。
アンジールがザックスに「可愛い」と言ったら、小さいなりに「かわいいちがーう。かっこいいー」と言い返す時もある。しかし今日みたいに、「可愛い」と言って喜ぶ時もある。それが気まぐれのまちまちで、笑えてしまうのだ。
「ねー、あんじーゆー」
気付けばザックスがソファによじ登って、アンジールの上に乗っかっていた。うさぎ耳付きのフードを被ったまま、「あんねー」ともじもじしている。
これは小さいザックスが、アンジールに「お願い」する時の仕草だ。アンジールは背中を撫でながら、「何だ?」と耳を傾ける。
「ザッくんねー、おでかけしたーい。うしゃたんきて、おでかけしたーい」
どうやらかなりお気に入りのようだ。
「良し、明日お出掛けするか!」
「やったーっ!!」
ザックスは万歳をして喜び、「あんじーゆ、だいしゅき!!」と言って、ちゅっちゅっと沢山キスをしてくれる。もうザックスがとっても可愛くて、アンジールは小さな彼をきゅっと抱き締めた。
20100505