08 ピストン


 決して無理強いはさせたくないんだ。だって、苦痛にゆがむ顔なんて見たくないし、気持ち良い思いだけさせてやりたいんだよ、お前には。
 薄紅の唇をうっすらと開いて、物欲しそうな瞳で見つめて、これで欲情しないなんて無理だ。
 昂ぶった熱をお前の内に挿れたくて、急く気持ちを抑えてそっと入口に宛がうと、事もあろうにお前は「嫌だ」と言う。
 本当に嫌なら、ぶん殴ってでも抵抗すれば良いのに、それをするどころか、体は可哀想な程濡れている。ほら、こんなにわなないているじゃないか。
 素直じゃない唇に小さく歯を立てた。
 じれったい程ゆっくりと熱を挿れながら、「嫌だ、じゃないだろ」と耳元で囁く。すると、鼻に掛かった声で、途切れ途切れに「嫌だ」と言う。
 そのきゅっと閉じられた目縁に涙の滴が現れるのを見ると、それが快感によってもたらされたものだと分かっていても、俺は動きを止めざるを得なくなってしまう。
 それくらい、お前が大切で愛しくて堪らないんだ。俺はお前が思っている以上に、お前にいかれてる。
 絡み付く内壁をもっと感じたいと思いつつ、「嫌だ」と言うお前に負けて、俺はゆっくりと逆戻り。
 すると、お前はまた「嫌だ」と言う。全く、どっちなんだと思いつつ、俺はうっすらと笑みを浮かべた。
 締め付ける内壁を振り切るように抜こうとすると、「嫌だ」と言って絡み付く。
 嫌な思いはさせたくなくて、引き抜き掛けた熱を再び沈めると、その唇がようやく「良い」と言う。
 もう最初から、全部知ってるけどな。
 「嫌だ」を繰り返しながら、そのうち「嫌だ」と「良い」が半々に、そして「良い」ばかりを繰り返す。体はずっと、「良い」のままなのに。こちらの方がよっぽど正直だ。
 昂ぶった俺をぴっちりと咥え込みながら、「大好き」と言ってキスをせがむ。あぁもう、可愛いな、本当に。
 お前の中を何度も何度も往復しながら、俺はふと思いついて言った。

 「なぁ、『嫌よ嫌よも好きのうち』って、知ってるか?」




 20100121