05 体液


 天井から吊された幾枚もの薄布が、空間を仕切り、覆う。中には端に、極小さな鈴が縫い付けられているものもあった。薄布は時折、ゆらりと揺れて空気の流れを描き、りんと澄んだ音を鳴らした。香炉からは絶えず煙が立ち上り、室内を気怠く漂う。幾種類もの香料を合わせて作られた薫香で、室内はむせ返る程だった。
 時折小さな水音がする水槽は、僅かに濁った水で満ちている。その中を優雅に泳ぐ宝石達。尾びれが長く、赤・白・青等の色が美しく混ざる体の琉金、鮒に似た体型で色合い渋い朱文金。どれも小さくて可愛らしく、そして美しかった。その動きは、見ていて飽く事がない。ひらひらと泳ぐ彼等をじっと見て、ふと「お前達は、日長一日何を考えている?」と問い掛けてみたりして。
 広い広い部屋の一番奥、幾枚もの薄布をくぐり抜けてたどり着いた先には、かなり大きい褥が敷かれている。額には豪華な織物が施されている。その褥を覆うように、天井から大きな天蓋が吊されていた。それは、ほぼ正方形に近い形をしている。各辺からは、極薄い布がたっぷりと床に流れ、沢山の襞を作っていた。その天蓋の中に、人影が揺れた。
 ザックスは脇息に俯せるようにして、夢と現の境を彷徨っていた。色の異なる薄い衣を重ね着して、一番上は豪華な刺繍の施された厚手のものを羽織っている。重たげなそれは全面に色とりどりの花吹雪で、まるで今にも花弁がひらりと風に乗って舞い落ちてくるかのようだった。布地に埋まるようにして微睡している彼の周りだけ、時が止まっている。
 さらり。
 「ん……」
 りん、と微かに空気の震える音がして、ザックスがそれに気付く。瞼は閉じたままで、音の気配を探る。床をゆっくりと歩く足音がする。それは良く知った足音で、ザックスはうっすらと微笑んだ。天井からの薄布を腕で避けながら、真っ直ぐここへ向かってくる。あと、もう少し。天蓋の外、少し先に置かれた燭台には幾枚もの油皿が置かれている。それぞれで灯る明かりが、一斉に揺れた。
 さら、り。
 最後の薄布を上げる音。俯せた顔をゆっくりと横に向けて、布越しに彼の姿を見る。あぁ、愛しい。
 「アンジール……」
 ザックスは脇息からそっと体を起こした。アンジールが薄布を持ち上げて、ゆっくりと天蓋の中に入ってくる。その手には、持ち手の付いた箱を提げている。漆塗りのそれは、細やかな螺鈿細工がとても美しかった。
 「寝ていたのか? 待たせてしまったな」
 「いや、全然……」
 コトリと箱を置いて、アンジールはザックスを引き寄せた。ふわりと香の薫香が漂う。頬に触れるだけの口づけをして、ザックスはアンジールの胸に顔を寄せた。衣の肌触りが滑らかでひんやりとしていて、気持ち良かった。
 「そうだ、今日はお前に土産がある」
 アンジールが箱の蓋を開けた。その中には、見事美しく咲いた一輪の芍薬。花弁を何枚も重ねた大輪の赤い花。ザックスの薄紅の指先が、愛おしそうにそっと花を取る。すると、りんと澄んだ音が花の中から聞こえた。ザックスが不思議そうに花弁を指先で掻き分けると、中心部分に身を潜めるようにして小さな鈴が入っていた。摘んで取り出し、掌に乗せる。銀色の鈴は、その表面にとても細かい彫り細工が施されている。
 「綺麗だな……」
 うっとりと見つめて静かに転がすと、ちりんと鳴る。
 「貸してみろ」
 アンジールは帯の間から紐を取り出すと、鈴に通した。紅い紐の端には、小さな翡翠の玉。ザックスの衣の裾を探って、その奥にある右足首をそっと掴む。ずっと衣に隠されていた素肌は、空気に触れて大して寒くもないのにピクリと動く。滑らかな足首を掌で一撫でして、アンジールは鈴を結びつけた。
 ザックスは嬉しそうに鈴の付いた足首を見つめ、香りを確かめるように花に顔に寄せる。瞼を閉じると長い睫の影が落ちた。
 「有り難う……嬉し」
 アンジールは返事をする代わりに、ザックスの瞼に口づけた。「これは後でな」と言いながら、芍薬を再び箱に戻す。そして、磁器の茶壷と蓋椀を取り出した。つるりとした美しい白地に、蓮の花が描かれている。蓋椀の蓋を取り、茶壷の中身を静かに注ぐ。薬湯のようなそれは、澄んだ赤茶色。湯気が立ち上り、甘く濃い香りが辺りに漂った。その様子をザックスは静かに見つめている。視線は、茶器を扱うアンジールの指先に熱く注がれていた。ほぼ一杯になった蓋椀を、ゆっくりとザックスに手渡す。袖の先から出た両の指先で受け取ると、そのままゆっくりと口元に寄せる。薄い飲み口にザックスの唇が当てられて、中身が静かに喉へ滑り落ちてゆく。色白の喉が上下する美しい様を、アンジールは双璧を細めて見つめた。
 「ふっ……」
 飲み干すと同時に、ザックスの口端から僅かに滴が零れた。アンジールの指先がそれを拭う。空になった蓋椀を受け取って、箱に戻す。半分ほど蓋を閉めて、褥の端の方へ寄せた。アンジールがザックスの隣へ座る。こめかみから指先を差し入れて髪の毛を梳くと、ザックスは気持ち良さそうに目を閉じた。
 「おいで」
 ザックスはゆっくりと動いて、アンジールの脚の上に頭を乗せると、うずくまった。アンジールの掌がその頭を優しく撫で続ける。それは、これから訪れる濃密な時間への大切な準備だった。


 暫くすると、ザックスの体に変化が訪れる。呼吸が僅かに熱くなっていた。アンジールが衣の袖から出る指先を握ると、微かに汗ばんでいる。目を閉じているザックスに、そっと声を掛けた。
 「ザックス、ちょっと退くぞ」
 アンジールが静かに、ザックスの体を横にずらして立ち上がる。そして、奥に置かれた広蓋の中から折りたたまれた布を持ってきた。紫苑色の布は、広げるとその大きさは大人ふたりが横になっても余裕がある程だった。それを褥の上に敷くと、ザックスを座らせる。しかし彼は、すぐにアンジールの元にうずくまった。
 「暑いか?」
 アンジールの問い掛けに、ザックスはコクリと頷いた。頬は微かに上気して、唇は小さく開かれている。額にはうっすらと汗をかいて、前髪が数本貼り付いていた。アンジールが一番上に着ている厚い衣を脱がせる。袖から腕を抜いて衣が体から離れた途端に、ふわりと辺りに得も言われぬ香りが漂った。それは焚きしめている香の香りとは、比べ物にならない程の真に良き芳香。
 「素晴らしいな……」
 アンジールは驚嘆の溜息を漏らした。この香りは、ザックスの体そのものから発せられるものだった。彼は長い間、特別に調合した薬湯を飲み続け、その結果自らの体の中から美麗な香りを漂わせるようになった。こうして僅かに汗をかいても、そこから香りを発するのだ。
 「アンジール……あつ、い」
 ザックスが手の甲で額を拭った。アンジールが両手で彼の頬を包む。
 「悪かった。さっきの薬湯に、少しだけ体温を上げる薬を入れた。すまない」
 「そっか。でも、平気……あついだけだから……、俺……どう?」
 ザックスが、やや伏し目がちで尋ねる。自分の体がどうか聞いたものの、恥ずかしいのだ。アンジールはうずくまっているザックスに、覆い被さるようにしてその耳元に囁いた。
 「とても良い香りがする。こんなに艶っぽくて……、日に日に良く香るようになるな」
 首筋に顔を埋めて息を吸い込む。薔薇や茉莉花が複雑に絡み合ったような香りに、眩暈すら感じそうだった。そして、「お前の香りは、俺を狂わせそうだ」なんて言う。ザックスは熱い吐息を漏らした。
 アンジールはザックスを起き上がらせて、幾重にも巻かれた腰布を丁寧に巻き取った。そして、彼が纏っている衣を一枚ずつ脱がしてゆく。さらさらと衣擦れの音がする。素肌に近付くにつれて、香りが強まる。薄い衣はしっとりと汗を吸って、吸い付くようだった。一枚のみを残して全て脱ぎ去ると、色の重なりが綺麗な布の山が褥の上に築かれた。ザックスの背後からそっと抱き締めると、彼はその胸に体を預けた。ザックスはアンジールの右手を取り、自分のしっとりと汗ばんだ熱い指先を絡ませた。アンジールが衣の裾から覗くふくらはぎに手を這わせると、ザックスは小さく身動ぐ。ちりん、と鈴が鳴る。肩口に顔を寄せ、薄紅色の耳元にそっと囁いた。
 「あれ、使っても良いか?」
 アンジールの言葉にザックスは切なげに眉を寄せる。
 「あれ、って……。俺……、だめ? 良くない?」
 アンジールはすっと目を細めた。ザックスは知ってて、わざとこんな事を言うのだ。俺に言わせんが為に、こんな悩ましい顔をして「良くない?」なんて聞いてくる。
 「良くないなんて、ない。お前をもっと……沢山可愛がりたいんだ」
 殊更ゆっくりと「可愛がりたい」と言ってやる。ザックスは嬉しそうに微笑んで、「使って良いよ」と頷いた。
 アンジールはそのままゆっくりと、ザックスの体を俯せにさせる。自身が着ていた衣の山に顔を埋めて、ザックスは布の感触を味わう。アンジールは箱の中から小さな壷を取り出した。ザックスの左足の膝を、静かに曲げさせる。アンジールの意図を解して、ザックスは僅かに腰を浮かせた。
 「ザックス、少し……冷たいぞ」
 アンジールが壷の蓋を開けて、中指を中に入れた。掬い上げると指には、透明な水飴のようなものが絡み付いている。衣の裾からそっと手を差し入れて、ザックスの後孔に指先をゆっくりと押し付けた。
 「あっ」
 冷たさにザックスが思わず声を上げる。アンジールは反対側の手で、あやすように布越しに彼の背中や脚を撫で続けた。同時に、後孔に押し当てられた指先は、大した抵抗を感じることもなく、するりと飲み込まれてゆく。アンジールが指先に取ったものは、弱いながらも一種の媚薬の類だった。そんなものを使わなくても充分なのだが、時折こうして戯れのように使ってみたりするのだ。指が根元まで埋まると、中でゆっくりと指先を動かした。
 「あっ、ん……」
 ザックスが鼻に掛かった声を上げる。アンジールの形を覚えている体は、徐々に彼を欲しがる。何度か内壁を擦るようにする。僅かに濡れた音を立てて、アンジールの指先が引き抜かれた。
 「はぁ……ぁ、アンジール……」
 ザックスはぺたりと腰を落とした。体の中心の奥で、淫靡な火が燻り始める。そろりと体を横向きにして、隣に座るアンジールの膝を掌で撫でた。
 「あぁ、良い香りだな……」
 アンジールはザックスの背筋に指を伝わせた。


 「ふっ……あぁ……、ぁ」
 ザックスが全身を上気させて、何度も小さく身を捩る。その度に、ちりんと鈴の音が零れた。体を丸めて、身を縮ませるようにしたかと思えば、足先をぴんと伸ばして褥を蹴った。体の奥が熱くて震える。じわりと媚薬が効いてきたのだ。隣のアンジールを見遣っても、彼は涼しい顔をして触れようともしない。今すぐにでも、全身を触れて欲しいのに。
 「アン、ジール……、ねぇ」
 「何だ?」
 「…………」
 「触れて欲しいのか?」
 ザックスは頷く。それを見てアンジールは、箱の中から先程の芍薬を取り出した。そしてその花で、そっとザックスの体を撫でた。ぴくりと手足が跳ねる。幾枚もの花弁が衣越し、敏感な肌の上を滑る度に、体の奥が痺れるようだった。ザックスが起き上がって、もどかしげに衣を肩から落とした。項から肩、背筋を通って脇腹へ。腰のくびれで花を何度も往復させると、「もっと」とせがんだ。
 アンジールは着ていた衣を脱ごうと、帯に手を掛けた。すると、ザックスが腕を伸ばす。彼の腕は急くようにアンジールの衣を脱がした。
 「膝立ち出来るか?……そう、少し脚開いて……、肩に掴まって良いから」
 アンジールの脚の間で、ザックスは静かに膝立ちする。腰の辺りで纏わり付いていた衣が、するりと落ちた。一糸纏わぬ姿を見られる事に多少の羞恥はあるが、それよりアンジールに見られる快感の方が遙かに勝った。
 紅い芍薬が胸から腹、脚の付け根へと滑り落ちる。既に形を変えつつあるザックス自身には触れないで、その周辺をアンジールは花で撫でた。ザックスがその様子を見ながら、熱く囁いた。
 「触れて……」
 望みはすぐに叶えられた。紅い花弁がザックスの熱に触れる。何度も掠めて、花に埋めるように押し当てられる。
 「んっ……あ、……良い、ぃ」
 アンジールの肩に両腕を突いて、ザックスは緩やかな刺激に打ち震えた。アンジールが芍薬をザックスの熱から離す。花弁には朝露のような、透明な滴が落ちていた。
 「濡れてる」
 「だって……」
 この透明な滴でさえ、良い香りを漂わせる。まるで本当の花の蜜のよう。アンジールは濡れた花弁に唇を寄せて、器用に一枚を咥えるとそのまま毟って食べた。ザックスは体の奥が、カッと熱くなった。紅い花弁を咥えて食べる彼が、酷く淫猥に見えた。あの唇に自分自身が咥えられるの脳裏に描いて、更に熱は上がる。
 「感じるのか?」
 「え……」
 「ほら、溢れてる……」
 見ると、ザックス自身の先端からは、甘い香りを発する透明な蜜がたらたらと滴り落ちている。それは紫苑色の布の上に、濃く濡れた染みを点々と作っていた。こうなる事を見越して、アンジールは白い褥の上に色の付いた布を敷くのだ。感じて、体液が体から溢れる度に増える濃い染み。それは、乱れれば乱れる程増え、布を濃く染めた。
 「やっ、あぁっ」
 ザックスは恥ずかしさの余り、アンジールの肩口に顔を埋める。しかしアンジールはすぐに顔を上げさせて、その唇を吸った。最初は軽く吸うだけのそれは、やがて舌先で唇を割って口内へ入り、ザックスの舌を探り出す。そろりと差し出された舌を絡め取ると、きつく吸い上げた。ザックスの体が、びくりと跳ねる。でもすぐに必死に絡ませてくる。
 ぴちゃり、と濡れた音が絶え間なく響く。甘い唾液を吸い、深く口づけを交わしながら、アンジールは再び芍薬でザックスの熱に触れる。それはもう、今にも爆ぜそうな程に昂ぶっていた。
 「もっ……もう、い……いく」
 ザックスの膝が小刻みに震える。アンジールは昂ぶりの先端を、花の中に埋めようとした。すると、ザックスが首を横に振る。
 「嫌なのか?」
 「ん……、触って、アンジールが……触っ、て」
 熱に浮かされた瞳で懇願する。アンジールは頬に口づけて、ザックス自身を掌で包み込んだ。擦るようにしてやると、ザックスの腰が大きく揺れる。
 「んぁっ……ああぁっ!!」
 吐精したザックスは、アンジールの肩口に顔を埋めた。はあはあと肩で息をする。アンジールは掌でザックスの熱い迸りを受け止めた。指先から漏れたそれは、つつと糸を引いて落ち、新たな模様を描く。
 「ザックス、ほら」
 白濁の蜜でまみれた掌を見せた。一層、濃い香りが一面に漂う。それは精液独特の匂いではなく、花の蜜のような甘く濃い香りだった。そしてアンジールは指先に絡み付く白濁を、わざと音を立てて舐める。ザックスは目を細めて、嬉しそうにそれを見つめた。
 「お前のは……まさに甘露だな」
 「もっと、あげる……」
 ザックスの体は、既に新たな熱を孕んでいた。


 座ったまま、後ろから抱き締められた。首筋を舐め上げられて、ザックスは天を仰ぐ。アンジールの右腕が前へ回されて最奥の熱を探り始めると、自ら脚を開いた。
 「んっ……」
 良く知った指が後孔へ滑り込む。滑らかに、それでいて絡み付く内壁。動かす度に小さな水音を立てた。
 「まだ入るな?」
 「う、ん」
 指は二本、そして三本と増やされる。ザックスの後孔は熱く柔らかくアンジールの指先に絡み付き、ぐちゅ、と淫猥な音が響く。自らが発する音に感じて、アンジールの指を締め付けた。
 「い、や……」
 「嫌なのか?」
 ザックスはアンジールの腕を掴んだ。違う、嫌じゃない。
 「指じゃ、なく……て」
 「欲しいか?」
 ザックスは頷いた。腰に当たっているアンジールの熱が欲しかった。優しく狂わせる指の動きも大好きだった。でも、あの熱で隙間なく満たして欲しくて堪らなかった。
 「欲し……い……」
 ザックスの後孔が、アンジールと繋がりたくて、わななく。
 ふいに腰が持ち上げられたと思ったら、次の瞬間、圧倒的な質量が後孔を満たした。あまりの刺激に、ザックスが首を折れんばかりに反らして震える。
 「んっ……、ぁ」
 「息を吐け、……そう」
 アンジールがザックスの肌を撫でる。項や肩に唇を落として、時折強く吸って花を散らした。
 天蓋の中は濃厚で甘美な香りに満ちる。絡み付く熱い吐息、いやらしく響く淫らな水音。天上から舞い落ちるかのような嬌声と、それに呼応するかのような小さな鈴の音。衣擦れの音は絶え間なく打ち寄せる波のようで、紫苑色はその色を濃くしてゆく。
 ザックスの胸の色付きに小さく爪を立てると、あっという間に、ぷつと浮き上がる。そっと弄ぶと、ザックスは碧色の瞳を潤ませて涙を落とした。滑らかな曲線の頬を伝い、顎から滴となって落ちる。
 「ふっ……、ん、ぁ」
 その体を支えていても、ザックスは今にも崩れ落ちんばかりだった。アンジールの熱に後孔を満たされて、このまま溶けてしまいたいと思った。
 「アンジール……抱いて、強……く、抱い、て」
 熱く艶やかな体を、アンジールは力強く抱き締める。すると、ザックスの後孔がきゅうっと締まり、アンジールは思わず呻いた。
 「気持ち良いか? 俺も、だ……」
 ザックスは首を反らして振り向こうとする。その表情が妖しいまでに色めいていて、アンジールはザックスの奥を突き上げた。乱れた鈴の音が鳴り、甲高い嬌声を上げながら、ザックスの濡れた唇の端から唾液が透明な細い糸となって落ちる。
 「良、い……もうっ、……やぁっ、どうしてっ」
 あまりにも強すぎる快感に、ザックスが啜り泣く。敏感な体は、媚薬の効果で更に感じやすくなっていた。雪肌は花の色に色付き、豊満な香りを漂わせてアンジールを包み込む。
 汗と涙、唾液と精液。その体から滲み、滴となって溢れ、流れ落ちる体液は秘められた甘い蜜。その甘露を体内から出させ、受け取り、味わう事が出来るのは、今ザックスを抱き締めているアンジール、ただひとり。
 「お前を、吸い尽くして、飲み干してしまいたい……」
 「あぁっ、あ……ぁ、っ」
 ザックスは至上の喜びと快楽を感じながら、アンジールの腕の中で、美麗且つ濃艶に咲き乱れ続けた。 




 20100117