PR02(AZ ver.)


・2013年8月公開の人類が人型巨大兵器で戦う・・・・という某映画のパロです。続きです。
上記条件が大丈夫な方のみ、どうぞ。
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 『右脳・左脳の調整完了。パイロットの神経接続に問題なし』
 司令本部ではラザードを始めとして、レノや各スタッフたちが分厚いガラス越し、完全に起動したバハムートに視線を注いでいた。そして巨大な格納庫のあちらこちらで、今は誰しもが同じようにバハムートの様子を興味深げに見守っている。
 「……いいぞ、ザックス。その調子だ」
 脳が繋がっているので言わなくても伝わるのだが、アンジールはザックスを見て声を掛けた。ヘルメット越しに些か興奮したような面持ちのザックスと目が合う。頬が僅かに紅潮していた。
 「バハムート、状態は良好。引き続き、現状を維持」
 起動実験なので今は上半身のみしか稼働しない。バハムートの下半身は拘束具に固定されたままだ。アンジールとザックスが一糸乱れぬ動きを取る度に、バハムートは大きな音を上げながらふたりのパイロットと同様に腕を挙げ、拳を握った。
 「ザックス、こいつは武器より格闘が得意な機体だ」
 「あぁ、分かってる!」
 アンジールは思い出す。かつてこの機体で出撃した時の事を。幼馴染みと共に乗り込んで、この鉄拳で何体もの敵を倒してきた。
 しかし。
 “アンジールッ、良く聞……ッ!!”
 突如、脳裏に「あの時」がフラッシュバックする。痛みと恐怖、そして絶望。突然、引き裂かれた。あの時まだ、俺たちは繋がっていた……。
 「……クッ」
 一瞬、アンジールは強い頭痛に襲われて体がふらついた。ぴたりと重なり合っていたふたつの脳画像が乱れ、ぶれた。それをレノは見逃さない。バハムートに向かって叫んだ。
 「バハムート! 神経同調が乱れたぞっ」
 「大丈夫だ、心配ない」
 「お前が大丈夫でも、ザックスがマズイぞっ! 兎を追い始めている」
 レノの叫びにアンジールは慌てて隣のザックスを見た。完全に動きが止まっている。目を見開いて、そこにはない「何か」を凝視している。
 「おいっ、ザックスッ!! 俺の声を聞けっ、戻ってこいっ!」
 膨大な記憶の波に襲われる。意識が戻ってくるように必死に声を掛けるが、それとは反対にザックスの周りからは音が消えていった。記憶に飲み込まれ始める。
 「ザックス、これは記憶だ、現実じゃないっ! ザックスッ!!」
 アンジールの叫びは最早、ザックスには聞こえなかった。


 *


 はぁ……、はぁ……、はぁ
 暗闇の中、自分の呼吸音がいやに大きく聞こえる。いや、それしか聞こえない。すべてが遠退いたと思ったら、自分は「あの日」にいた。
 雪が、降っている。しんしんと、静かに。
 針葉樹の森の中を泣きながら走っている子どもは、自分だ。もう、村には誰もいない。もう、村は村ではない。紅く染まった。
 遠くで地響きがした。ザックスは走るのを止めて、素早く木の陰に隠れる。いつしかもう寒さは感じない。
 そして、しゃくり上げながらもゆっくりと木の陰から覗き見た。森の切れ目、雪原の向こうには灰色の煙が燻っている。揺らめく炎が血に見える。その煙幕の向こうから、低い唸り声が聞こえた。何かが空気を切り裂いて、不気味に青白く発光する幾つもの光が森の方を見ていた。
 走った。もう、自分しかいない。誰もいない。父も母も、皆死んでしまった。
 「アレ」が何もかも、すべてを紅く染めた。
 ザックスの記憶の中でアンジールはすべてを見る。
 「ザックス、これは記憶だ、落ち着け。これは現実じゃない」
 幼いザックスが自分の前を全速力で走り抜けた。不気味な咆哮を上げながら、異形のアレが近付いてくる。アンジールはザックスの後を追った。
 「ウワァッ!!」
 深い雪に足を取られて、小さな体が真っ新な新雪に転がり込んだ。痛さと冷たさを感じる間もなく、振り返るとそこには。
 「ワアアァァァッ!!」
 大きな叫び声を上げながら、ザックスは右手をかざした。次の瞬間、ドリフト・スーツの右腕部分にホログラムが展開する。
 『プラズマ・キャノン、起動』
 バハムートの右腕先端が金属音を立て、プラズマ・キャノンへと鮮やかに変形する。先端部分がバチバチと青白い光を発し始めるのを確認して、レノがギョッとした。
 「これはマズイぞっと、ウェポン・システムが起動した!」
 つい先程まで歓声を上げてバハムートを見ていた人々がただならぬ異変に気付き始め、その場を次々と離れ始めた。その間も、バハムートはプラズマ・キャノンのエネルギー充填を続ける。これが撃ち放たれたら、格納庫が吹き飛ぶどころか消滅する。
 「ザックスッ、戻ってこいっ!!」
 アンジールが声を張り上げる。
 「マズイぞマズイぞ、っと!! 今すぐパイロットとバハムートの接続を切るんだっ!!」
 「ダメですっ、結合が強すぎる!」
 スタッフの悲鳴じみた声にレノが大きく舌打ちをした。
 「全員、直ちにこの場から退避っ、急いで逃げろっ!! 行けっ!」
 レノが指令本部にいるスタッフに大声で叫びながら、自身はコントロールシステムのケーブル接続部へ飛び込む。幾筋も伸びて束になっているケーブルを、手当たり次第抜き始めた。そこへラザードが叫んだ。
 「主電源ケーブルを抜けっ、それだっ」
 「了解っ!!」
 一際太いケーブルの根元部分を両腕で掴むと、目一杯引っ張る。
 「アアァッ、く……来るなぁぁっ!!」
 光を発している不気味な目玉、鋭利な牙が幾つも並ぶ複雑な形状の口。食べ尽くした村の人々の血で、ぬらぬらと紅黒く濡れている。
 父さん、母さん……
 「ザーーックスッ!!」
 「せーのっ、オラァァァッ!!」
 コントロールシステム本体に片足を固定して踏ん張ると、レノが渾身の力を込めて思い切り引っ張る。見た目はひょろりとしているが、黒いスーツの下は予想以上に鍛えられた肉体をしているのである。
 プラズマ・キャノンのエネルギー充填完了まで残り僅か。バハムートの右腕先端にエネルギーが集束し、辺り一面が目映いほどの青白い光に包まれている。エネルギー充填率を示す数値が100%へと近付く。
 突如、引っ張る抵抗がなくなった。反動で体が後方へと大きくよろめいたと思ったら、レノはその腕にケーブルを持ったまま派手に倒れ込んだ。
 「……抜けたっ!!」
 『プラズマ・キャノン、停止』
 コンソールの中に合成アナウンスの声が響く。唸るような低音を響かせながら、プラズマ・キャノンに変形していたバハムートの右腕先端部分が元の形へと収まっていく。
 「ザックスッ!!」
 急いでヘルメットを脱ぎ捨てると、アンジールはプラットホームを離れザックスの傍へと駆け寄った。放心状態となったザックスががくりと膝から崩れ落ちるのを支える。
 「大丈夫か、おい……ザックスッ!」
 「…………」
 アンジールに背後から抱えられながら、ザックスは無言のまま、ただただ宙を見つめていた。
 『ドリフト・シークエンスを終了します。もう一度最初から実行しますか?』
 ポッド内に流れるアナウンスが妙に乾いて聞こえた。
 「ふぅ……危機一髪だぞ、っと」
 苦虫を噛み潰したような顔でレノはバハムートを見る。近年、稀に見る緊急事態だった。その背後では普段余り表情を変える事のないラザードが、些か険しい顔付きで前を見据えていた。




 20131226

好きが高じて、続きを書いてしまいました。笑。
この後、敵の出現があるものの、ふたりは待機を命じられるのですが……、取り敢えずここで終わり。
多分続きは書きません。登場人物が増えるから! 笑。