PR(AZ ver.)


・2013年8月公開の人類が人型巨大兵器で戦う・・・・という某映画のパロです。
上記条件が大丈夫な方のみ、どうぞ。
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 コンソールを操作しながら、アンジールは二時間前に行われた、自身のパートナーを決めるトライアルを思い出していた。
 あの碧色の瞳が目に焼き付いて離れない。天性の素質と瑞々しさに加えて、若さ故の勢いと多少荒削りな点がある部分は否めないが、それでもあの身のこなしはさすがシミュレーターで51戦中51勝というだけある。他の候補者とはまるで次元が違った。
 同時に、手合わせしながら感じたあの感覚。呼吸が重なり、意識が重なる。まるで感覚と思考とを、ひとつずつ共有していくようだった。久し振りに感じた、ゾクリとするような高揚感と興奮。そして、無限に広がる世界に飛び出したような解放感。
 「俺はザックスと組む」
 トライアル終了後、即座に宣言するように告げたその言葉は、目の前ですべてを見ていた司令官であるラザードに却下された。
 何故、何故なんだ……。実戦経験の差か? 確かにザックスは実戦経験がゼロだ。だがそれを言うならば、自分自身五年も実戦から離れていた。それとも、体格的な差か……。
 アンジールは現実に意識を引き戻すと、小さく溜息をついた。
 「こちら、アンジール。準備は完了した。このままパートナーを待つ」
 ポッドと指令本部は常時繋がっている。起動実験開始前で忙しいのか、レノからは「了解」と一言だけの素っ気ない返事。その出で立ちと雰囲気から、時にはふざけているようにも見られてしまう彼だが、オペレーターとしての能力はずば抜けている。第一、レノがいないとバハムートは起動もできなければ維持もできないのだ。
 ポッド内に聞き慣れた合成音声のアナウンスが響く。
 『パイロット、入ります』
 アンジールは誰が来たのか確認する気にもなれず、入り口を振り向きもしなかった。そのままプラットホームの右側に立つ。
 「以前、左腕を痛めてな。こっちで良いか?」
 「あぁ、勿論」
 その声にアンジールは初めて、相手の姿を見た。そこには、ザックスが立っていた。何処か気恥ずかしげに小さく笑いながら。
 「何か言いたい事でも?」
 小さく首を傾げ、空色の瞳がアンジールを見つめる。
 「いや……似合ってるぞ」
 初めて見たドリフト・スーツ姿のザックスが、嬉しそうに笑った。


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 それぞれの制御アームが上方からゆっくりと下りてくる。運ばれてきたヘルメットとスーツが接続し、内蔵されているシステムが起動する。
 アンジールが右脳を、ザックスが左脳を担当する。出会ったのは数日前、大して相手の事も知らない。逆に言えば、知るより前に「自分たちには適合性がある」と互いの本能が判断した。互いに共有するものや結び付きが多いほど、そして強いほど、バハムートとの一体性は増す。
 モニターの表示が確認事項オールクリアとなる。
 「出動準備完了」
 アンジールの報告を受けて、レノの合図と共にポッドが急降下し、バハムートの胴体に納まる。大きな音と共に自動連結器が動き、バハムートの頭がしっかりと固定された。その様子を司令官のラザードは指令本部から眺めていた。
 「バハムート、オンライン状態」
 幾つものモニターに目を遣りながら、すべてが良好な事を現す表示にレノは嬉しげに目を細めた。その指先は軽やかにキーやパネルを叩いていく。
 「神経ブリッジ初期化中……、完了しました」
 「準備は整ったようだね。ブレイン・ハンドシェイク開始」
 「了解。バハムート、司令官の命令が出た。ブレイン・ハンドシェイクを開始する。開始まで、あと15秒……」
 ポッドの中にレノがカウントする声が響く。アンジールは自分の左隣に立つザックスをチラリと見た。その横顔には僅かな緊張が見て取れる。
 「ザックス、これは実戦じゃない。気持ちを落ち着かせろ」
 「あ……、うん。大丈夫」
 11……10……9、
 「これからお前が見るものは現実じゃない、記憶だ。兎を追うなよ」
 「兎を、追う?」
 「記憶を追う事を、俺達は“兎を追う”と言うんだ」
 5……4……3、
 「さぁ、俺の頭の中に入ってこい」
 「……1、ブレイン・ハンドシェイク開始!」
 次の瞬間、アンジールとザックスの脳内に、互いの記憶がまるで早送りをした映像のように現れては消える。高速で膨大な記憶の波。うねり。
 自分の部屋、見慣れた近所の風景、学校での授業、喧嘩別れした友達、初恋の相手、星空と青空、太陽、揺れるブランコ、泣きながら歩いた帰り道、悔しくて叫んだ丘の上、優しかった祖母、家族の団らん、父親、母親、
 『母さん……』
 !!
 何かに弾かれたように、ふたりの体が同時に大きく揺れた。
 レノがモニターを見ながら状況を報告する。
 「ブレイン・ハンドシェイク、完了しました。状態は安定……こいつは凄いぞ、っと」
先程までふたつ写し出されていた脳の画像が、寸分違わず重なり合ってひとつになっている。見事なシンクロ率に、思わずレノはヒュウと小さく口笛を吹いた。
 アンジールとザックスは互いに息を吐き、相手の顔をチラッと見ると、何も言わずそのまま同時に両腕でゆっくりと構えの体勢を取った。一糸の乱れもない完璧な、まさに両者が一体となった動き。その動きはそのままバハムートの動きにもなる。全長80メートル近い巨体が、ドームの中で大きく動いた。その様子を見ていた周囲からどよめきと歓声が上がる。
 「アンジール……」
 ザックスは驚きの余り、その口調はやや間抜けなものだった。アンジールは小さく笑う。
 「喋らなくても分かる。脳が繋がっているからな」
 「バハムート、ドリフトは良好だぞ、っと。初めてなのになかなかやるな、ザックス」
 レノの言葉にザックスは得意げに笑った。




 20131108

好きが高じて書いてしまいました。笑。
この後、兎を追ったザックスが暴走してしまうのだけれど、取り敢えずここで終わり。
ちなみに引退前のアンジールのパートナーは、同郷の幼馴染みって設定にしてるのですが。