この腕は、この腕が


 ソルジャーだから、この大剣を握って、殺伐とした戦場へ征く。
 「有り得ない」とか「普通じゃない」と言われる戦闘能力で敵陣の中へ進む俺達に、最初は驚嘆の声を上げていた者も、次第にその凄まじさを理解するにつれて、密かに「まるで悪魔のようだ」と恐れるように言う。
 この大剣で、一体幾つもの命を奪った?
 この手は、何度血で染まった?
 この足は、幾つもの屍を踏みしめ、越えた?
 この目は、どれだけ凄惨なものを見た?

 でも、いつか。いつの日か。
 この世界から争いが消えて、戦場と呼ばれる場所がなくなるその日が来たら。
 その時は、この手で握り続け、この腕で振り上げ続けてきたこの大剣に暇を告げよう。
 そして、お前を抱き締める。
 もうこの腕は、お前を抱き締める為だけにある腕。
 ずっと、ずっと永遠に。


 月が白い。
 この腕が、お前を抱き締める為だけにあれば良いのにと、切望した荒野の夜。