(無題)


 さて、このヘリに乗るのはちょっと久し振りだな。
 体調は良いし、体も軽い。朝の食事も完食だし、今日は髪型が良い感じに決まった。試しに買ってみたあのワックス、なかなか良いね。
 ザックスはブーツのジッパーを閉め直した。
 現在はヴァーチャル・システムでの訓練中。ヘリは機体を揺らしながらミッドガル上空を飛んでいた。
 実はこの訓練、二回目なんだよな。今回は単純に前回のデータを使いながら、反復練習ってやつ。だから、アンジールは仮想空間に入っていない。きっと今頃、壁の向こうでモニター見ながら腕組みしてる筈。
 記録更新、お楽しみに。

 Commence mission in

 「は?」
 ザックスは機内に響く、聞き慣れないアナウンスに眉を顰めた。
 おいおい、これから時計合わせだろ?

 3 2 1

 カウントされて慌てて時計を合わせる。

 mark. Begin mission. Operative is ready for insertion.

 取り合えず間に合った。でも、何だよこれ。
 前回のデータのアンジールが、背後からザックスに指示を出す。しかし。

 「The train has been overrun by wutai troops. Eliminate them and regain control of the train.」

 えーっ!! ちょっ、何言ってるんだよ、アンジール。
 と、取り敢えず、

 「りょーかーい!!」
 俺は笑いつつも、頭の中を疑問符で一杯にしながら、ヘリから力一杯飛び降りた。あーやっぱり気持ち良いな。

 「Get serious !」

 アンジールの叫びが耳を掠める。「真面目にやれ!」ってとこかな。
 暴走を続ける列車の屋根に、軽やかに着地。うん、完璧だ。
 ザックスがゆっくりと立ち上がると、少し遅れて後方にアンジールが着地した。

 「Zack,」

 名を呼ばれて振り返る。
 なぁ、何だかいつもと発音が違うんですけど……。俺は「ザックス」なのに、「ザック」って聞こえるよアンジール。ま、良いけどね。

 「forcus !」
 「ちょっ、待った! 何? 一体どうしちゃったんだよ、アンジールッ!!」

 前回のデータを使っているからまだ何となく理解出来るものの、一体どうなってるんだ?
 大体、何語を喋ってるんだよ、アンジールは。
 その場の状況に応じて、新たな思考をするプログラム設定にはしていない筈だから、目の前のヴァーチャルなアンジールは無言で突っ立ったままだ。ある意味、「打っても響かない」ってやつ。
 その時、外部からの音声が響き渡った。空間が一時停止の状態となる。

 『ザックス!』
 「アンジールッ!! なぁなぁなぁっ、一体どうなってるんだよ、ヴァーチャルのあんたっ!! さっきから何喋ってるか意味不明っ」
 ザックスはダンダンとブーツで列車の屋根を蹴る。すると、アンジールの盛大な溜息が聞こえた。
 『お前なぁ』
 「何だよ」
 『言語の設定、確認したのか?』
 「……あ?」
 えーっと、そういえばそんな設定、確認事項だったような……。
 『その様子ではしてないな。システムから連絡あっただろ、メンテナンスしたから、設定が一部リセットされていると』
 「あー……」
 俺は制服のポケットから携帯を取り出すと、画面を開いた。数回ボタンを押して、各種設定画面を確認する。
 あぁ、アンジールの言う通り。ヴァーチャル・システムの言語設定がリセットされてる。
 「う、ん……リセットされてた。ごめん……。これで、良し」
 先程までの勢いは何処へやら、ザックスは恥ずかしげに頭を掻きながら、「えへへ」と笑った。
 『全くお前は……。Zack,forcus !!』
 「えっ!! あ、れ? えっ?? 戻ってない?」
 再びザックスが携帯を覗き込みながら慌て始める。アンジールはほんの少し意地悪そうな笑みを浮かべながら、でも優しい眼差しでザックスの姿を見つめていた。




英語のセリフは北米版CCより。
冒頭のミッションが大好きでなりません。
勿論、ザックスの「I love you」も!!