それは唐突にやってきた。
水面に透明な滴が音もなく落ちて、その中心から小さば波が静かに広がるように、体の隅々まで行き渡る。指先、足先、頭の天辺まで届くと、そのまま跳ね返って体の中をあちらこちらへと移動する。
体温が、ほんの少し上がった。心拍数が、ほんの少し上がった。
そして、
ザックスは戸惑いながらも、笑った。
自分は彼が好きなのだ。自分より数年先にこの世に生まれて、自分より背が高くて逞しくて、寒い地域で育った彼が。
初めてその姿を目にした時、1stである彼に対する憧れよりも、地味で寡黙な雰囲気に取っ付きにくさを感じた。
正直、「苦手だ」と思った。
今なんて、「苦手だ」と思っていた頃の自分を懐かしく、そして少しくすぐったく思ってしまうのに。
「なぁ」
「何だ?」
「うぅん、何でもない」
呼べば彼の返事が返ってくる。ただそれだけの事がとても嬉しくて、何度も彼を呼んだ。何度も、何度も。
どんな高感度なセンサーよりもいち早く。
視線も息遣いも足音も、彼のすべてに俺は気づく。
好きって気持ち、好きって事は。
そう、
これは、恋なのだ。
とっくに気づいていたけれど。
ザックスは体温に包まれながら、嬉しくて笑った。
20140927