それは、一番幸せで、嬉しい時。
でも、一番切ない時。
この胸は、二十四時間いつもあんたを想ってる。
ひとりでいても、ふたりでいても。
気持ちを通じ合わせていても、時折不安になるのは何故だろう。
寂しくなるのは、何故だろう。
* *
「なぁ、アンジール」
「何だ?」
「俺の事、どれくらい想ってる?」
ザックスからの唐突な質問に、アンジールは虚を突かれたような顔をした。
『さて、一体どうした事やら』
アンジールはザックスを優しく抱き寄せる。温かな体は、するりと居心地の良い場所へ落ち着く。
「どれくらいとは……難しいな」
正直、どう答えて良いのかアンジールには良く分からなかった。想いをある意味形にして、または数値化して測る事は不可能だ。
「これくらい?」
ザックスは子供のように両手を大きく広げた。「あぁ、そういう事か」と、アンジールは納得してクスクスと笑った。
「これくらい、だな」
目の前でアンジールが親指と人差し指を出して、3センチほどの幅を表わした。これが、ザックスへの想いの大きさらしい。
「これ? こんなに小さい……こんなに、ちょっと?」
ザックスがアンジールの指を見て、意気消沈がっかりする。そのまま無言で首筋に腕を回して、ぎゅっと抱き付いてきた。
もしかしたら拗ねてしまったかもしれない恋人の髪の毛を優しく梳き、そのこめかみにキスをする。
「ちょっとじゃないぞ。これはな……」
続きがあるらしい話し振りに、ザックスは顔を上げる。目の前に、再びアンジールの指。明らかに「ちょっとだけ」を示している、二本の指。
「この空間に、銀河系がすっぽりと収まってしまう」
「え、」
ザックスがきょとんとした顔をする。アンジールはもう片方の手でザックスの頭を撫でる。
「つまり……、俺の想いはおまえより遙かに大きいという事だ」
「アンジール……」
「で、それを基準にして……このくらい……かな?」
両腕を大きく広げる。指先から反対の手の指先まで、銀河系が幾つも収まってしまう、まるで天文学的な大きさ。
「自分だけだなんて思うなよ。俺だって、お前の事をいつもとても、想ってる」
そして、ギュッと抱き締められた。
広い広い宇宙に、抱き締められているような気がした。途轍もなく大きくて、優しい想いに抱き締められる。
ザックスは、そっと瞼を閉じた。
いつまでもいつまでも、ふたりは抱き締め合ったまま動かなかった。
* *
それは、一番幸せで、嬉しい時。
でも、一番切ない時。
今日もここから、あなたの事を想っています。
ずっとずっと、変わらずに。
彼方から、ずっと。
ズット、想ッテイマス。
20120325