004.懐かしむ


 「懐かしい」と思い返せるほど思い出を重ねる前に、いなくなってしまった。
 もう、会えない。
 なのに、其処ここに残る彼。
 俺を捉えて離さない、彼。

 精一杯、生きた。
 色々なものを受け取って、託されて、今日今この時まで生きてきたけれど。
 多分これ以上、もう此処には居られない。
 もうすぐこの命を、天の何処かにいる神様に返す時が来る。

 迎えに、来て。

 この時を、あの日からずっとずっと、待ち望んでいた。
 もっと一緒に、ずっと一緒に居たかったんだ。
 また会えたその時、俺は彼の事を懐かしむのだろうか。
 彼もまた、俺の事を懐かしむのだろうか。



 「アンジール……」




 20120325