003.諦める


 今の自分の中にはない言葉、だな。
 この思いに、「諦める」なんて言葉は存在しないんだ。
 だって、それほどに大好きだ。
 うるさがられても、鬱陶しげにされても、諦めない。
 今回ばかりは俺、諦めが悪いみたい。ごめん。
 そりゃ、「本当は……」とか「もしかしたら」とか、色々考えちゃうけどさ。
 そういう事って考えてもキリがないし仕方ないし、それこそ最初っから有り得ないになっちゃうし。
 この気持ちに気付いた時、自分の中に驚きと戸惑いがあったのも事実だし。
 …………。
 だって、俺は彼と同じ男だ……、同性だ。そりゃ、途惑うよ。今まで好きになったのは、みんな女の子だったし。
 でも、今は彼の事を好きな自分が好きだったりする。
 嬉しいし、楽しいし……時には切なくなったりするけどさ。
 第一、自分の気持ちに嘘はつきたくないしな。
 それに……、分かるんだ。
 本気で嫌がってはない、って。
 だって、笑ってくれる。これがまた、カッコイイんだ。マジで。
 「しょうがないな」とか言いながらさ、優しく笑ってくれる彼が大好きだ。
 思わず見とれそうになるし、胸の奥がきゅんとするし、ドキドキするし。
 恥ずかしいくらいに恋してるから、もう誰にも言えない。
 ……とか言いながら、言っちゃったか、あんたに。


 俺の、諦める?
 だから、俺は諦めないの。
 え、どうしても?
 何だよ、それ……面白いな、あんた。
 うーん……取り敢えず、目の前の「諦める」は明日の食堂のランチA定食かな。
 俺が好きなメニュー、しかもあまり定食にはならないやつなんだけど、明日は朝から任務でずっと外出るから。
 これはさすがに、諦めるしかないだろ。
 でもさ、味気も素っ気もないレーションでも、彼と一緒だから美味しいかもなって。
 あーっ、今笑っただろ?! 何だよ、折角答えてるのにさ。
 ……ま、いいけどね。
 そんな訳で、恋しちゃってるんだ、俺。
 言っとくけど、彼には内緒にしておいてくれよな。
 そのうち俺が自分で伝えるからさ。


 「あんたが大好きだ」、って。




 20120219